【#03】レタスが泣いた日
〜あの日レタスが泣いていた〜
妊娠してからというもの、4ヶ月まで辛い悪阻に苦しんだ私。4ヶ月をすぎ、やっと食べ物が美味しいと感じた。
大好きな納豆卵ご飯。大好きなオクラ。大好きなビーツ。(なかなか高いから買わないけど)大好きになった甘酒…
そして野菜。特に生野菜は食べれるようになって幸せだった。
主人は水曜日が早帰りなので、帰宅後にご飯を作ってくれる。そう、いい旦那さんなのだ。温厚で頭も良い。勤勉で優しい。アニメやゲーム、特に仮面ライダーに明るい。本当にいい旦那さんなのだ。
そんな旦那さんだからこそ、私の2回目の悪阻には前回以上に優しく接してくれた。ニンニク使わないで!玉ねぎやめて!半ばヒステリックになりながら怒る私に、毎回ゴメン気をつけるよ…と言ってくれた。
そう、だからこそ私は悪阻を乗り越えられた。
確かあの水曜日は、野菜の買い出しに行った日だった。悪阻が落ち着いたので、野菜サラダを食べたいとリクエストした私。潤沢な野菜室から、彼はもやしとレタスを選んでサラダを作った。私の大好きなゴマドレを使って。
娘とお風呂から出た私が、食卓で見たのは、緑色のベシャベシャな正気を失ったレタスだった。上には元気さを主張するモヤシ。
ねえ、レタス茹でた?
うん、モヤシと茹でたよ。
私の何かが音を立てて崩れた。あの時のレタスとの再会と言ったら、帰ってきたドラえもんで、ジャイアンと戦ったあとのボロボロののび太を見つけたドラえもんの気持ちと一緒だ。レタスは泣いていた。私も泣いた。
ひどいよ…レタスの美味しさって、シャキシャキじゃん!意味がわからないよ…!
ゴメン、もやしも茹でるから…つい。
なんじゃその言い訳!じゃあトマトとポテトのサラダならトマト茹でるんかい!ふざけろ!
久々に主人に本気で怒った、そんな水曜日。